変わりゆくふつう


 前回、思春期の子どもたちの心の中でしばしば生じる、「ふつうからの間違い探し」について紹介しました。このふつうからの間違い探しは、「ふつうになりたい」という本人の意志に反して心の中に生じてしまうため、多くの場合本人も周囲も大変な苦しみを経験することになってしまいます。そして、このふつうからの間違い探しには、「ふつうではない自分の確認」という大切な目的があることも前回ご案内しました。それにしても、なぜ思春期の子どもはこんなことをしなければいけないのでしょうか。

 ポイントは前回も少しお伝えした「変化」です。図1を見てください。グラデーションという色の変化が表現されていますが、この図のaの領域は左端の白い領域と比べるとずいぶんと黒ずんで見えますし、右端の黒い領域と比べると白っぽくも見えます。また、図2を見てください。これは川が海に注ぐところ、つまり川から海に変化する河口の絵ですが、この絵のbの辺りの領域は、果たして川なのでしょうか、海なのでしょうか。

 思春期の子どもたちは、まさに子どもから大人への変化の真っただ中にあります。心の状態が、図1のaの領域や図2のbの領域のように、どっちつかずの状態にあります。前回の女の子のような「ふつうになりたい」という願いは、このどっちつかずの不安定な状態を、なんとか「ふつう」という安定した状態にしたいという切なる願いです。そのために、ふつうではない部分をいくつも数え上げて、「ほらやっぱりふつうじゃない。どうしよう…」と苦しみ悩むのです。ただ、このことは同時に、子どもから大人へという心の中の大きな変化の流れの中にあることを忘れてはいけません。子どもとしての「ふつう」から、大人としての「ふつう」へ。「ふつうではない自分の確認」というのは、ですから子ども時代の「みんな同じ」がふつうだと感じていた自分から、「それぞれ違う」がふつうである大人としての自分への変化のために必要不可欠な心の取り組みなのです。

畠山正文


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