心ってなんだろう? 7/10
人の「心(こころ)」が本当に成長するときというのは、社会的な衣装という「形」から、ゼリー状の「心」がはみ出して、つらく苦しく感じるときなのではないでしょうか。しかしそれは同時に、状況によっては「心」へのダメージが深刻化してしまうリスクと隣り合わせのときでもあります。
「係長」という社会的な衣装が51歳の部下の前でどうにもうまく着こなせないこの「ぼく」にも、つらく苦しい時間帯が訪れているようです。
わたしたちが生活するこの日本社会は、ある秩序に従って順に社会的な衣装を着せるという慣習を採用し、「心」のはみ出しができるだけ起こらないように防いできました。その一つが年功序列です。33歳の上司が51歳の部下を持つなどということが起こらないように、仮に起こったとしても上司にあまり責任が生じないように、うまく慣習や制度を整えてきました。これは、日本らしい、一つの「心」の抱え方、衣装の着せ方でした。
しかし、この「心」の抱え方や衣装の着せ方ばかりでは、世界の厳しいグローバル競争を勝ち得ない状況になってきました。こうしてしばらく前から日本社会は、伝統的な「心」の抱え方や衣装の着せ方と、新しいそれらとの間のあまりに大きなギャップによって、この「ぼく」のような「心」のはみ出しを様々な場面で生み出し続けています。それはまさにちょうど「心の時代」という言葉が人口に膾炙されはじめたころから始まり、現在はその状態が日本社会の全体へとどんどんと拡大し深刻化してきています。
(次回へ続く)
畠山正文
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