心ってなんだろう? 6/10
わたしたちが、生活に充実感を抱くとき、それなりの幸福感を抱くとき、わたしたちの心は、様々な社会的な衣装を身にまとっていることに気づきます。「会社員」という衣装、「セールスマン」という衣装、「サッカーのサポーター」という衣装、「よき後輩」という衣装、「新郎」という衣装…。
こうした衣装が、本来はゼリー状で本当のところよくわからず、つかみきれない「心(こころ)」というものに、目に見える「形」を与えてくれます。そして、こういう幸せな時はたいてい、身にまとっているそれぞれの衣装同士はあまり大きなギャップや矛盾を抱えてはおらず、心は比較的スムーズにそれぞれの衣装を脱ぎ着できる状況にあります。
例えば、「会社員」と「新郎」という衣装は、この「ぼく」にとってそれほど矛盾するような衣装ではないので、状況に合わせて楽に脱ぎ着ができています。この状態のことを、「ぼく」は「順風満帆」と言っているわけです。
ですから、わたしたちが充実していると感じるときや幸せだなと感じているときは、わたしたちは「心」が社会的な衣装という「形」にうまくおさまっているので、ゼリーのようなよくわからない「心」を直接には見ておらず、衣装である「形」のほうを見ていることが多いものです。
このように充実し幸せに感じているときには、わたしたちは「心」を直接には見ておらず「形」ばかりを見ているからこそ、この「ぼく」の上司である課長のようにうまく衣装を着こなせず「心」が裸になって凍えそうな状態の人に対して、まさに「心」ない態度や行動をしばしばとってしまうことがあります。わたしたちが、人に対する思いやりをなくすときには、「形」ばかりにこだわって「心」を見失ってしまっていることが多いようです。
(次回へ続く)
畠山正文
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