持続可能なこころ

持続可能なこころ vol.1

 SDGsという言葉が広く世界的に浸透しています。ご存知の通り、「Sustainable Development Goals」の略語で、日本語では「持続可能な成長目標」と翻訳されます。貧困問題やジェンダー平等などにとどまらず、自然環境や社会、経済に関する全17の分野について包括的に世界各国が足並みをそろえて取り組むことを目指して2015年の国連総会で採択された、国際的な行動指針です。とりあえず創り出したり、開発したり、発展させたりして、どうせ将来はどうなるかわからないから後のことは後で考えるというのではなく、将来にわたって安定した状況が持続していけるようにという意味で「持続可能な(Sustainable)」という言葉が使われています。

 この持続可能性(Sustainability)という目標は、環境や社会や経済のことだけでなく、もっと身近なわたしたち自身の心についても、大切なことなのではないか、とわたしは最近考えています。いやむしろ、国際的な目標とか、国家的な指針とか、そんな大がかりで大層な目標も、結局のところわたしたちの身近で日常的な心の在り方の積み重なりによってしか、実現できないのではないか、とさえ思います。わたしたち自身の心が長い時間安定した状況で大切なことに一つひとつ持続して取り組んでいけることこそが、ひいては社会や世界の持続可能性を広げていけるのではないでしょうか。

 そう考えてみると、自然環境や社会や経済ばかりでなく、わたしたちの心もまた持続可能性の危機が、いたるところで訪れていることに気づきます。いわゆる「メンタルにくる」「メンタルやばい」「病むわ~」といった、少し前からみなさんが使うようになった何気ない日常用語は、まさにこの心の持続可能性の危機のことを言っています。そして実際に、心の持続的な安定が保てなくなって、様々な症状や行動に現れてくることもあります。日本全国の精神疾患の患者さんの数は、年を追うごとに増え続けています。こうした危機にわたしたちはどのように対処していけばよいのでしょうか。わたしたちが持続可能な心を取り戻すにはどうしたらよいのでしょうか。

 そのためにまずは、なぜこうした危機がわたしたちの心に訪れているのかについてよく理解しなければいけません。これまでは多くの人が心の持続可能性を保ってきていたのに、どうして最近になって保ちづらくなってしまったのでしょうか。心の持続可能性を保つためには、いった何が必要なのでしょうか。わたしたちは何を失い、そして何を取り戻せばよいのでしょうか。こうした疑問について、じっくりと考えていきたいと思います。

(次回に続く)

畠山正文

コメント

タイトルとURLをコピーしました