心ってなんだろう? 9/10
わたしたちが暮らす現代社会は、心が溶け合う瞬間を一度や二度経験すれば、うまくいくという社会ではなく、何度も何度も繰り返し経験する必要がある社会のようです。
「ぼく」も長男の誕生をきっかけに、ようやく会社での心の通い合いが起こり、仕事が軌道に乗り始めたと思ったのに、今度は妻との心の通い合いが途切れてしまいました。
以前お伝えしたように、心は言葉にした途端にずれてしまいます。このことに敏感な社会は、言葉にしないことを美徳とする文化を長い時間をかけて築き上げてきました。わが国日本も、わかりきっていることを言葉にするのは「野暮」なことであり、言外の心を察し、空気を読むことを大切にしてきました。つまり、日本人はお互いに心が溶け合い、分かり合っているので、言葉は必要最低限でよいということを前提とした文化を築いてきたと言えます。
妻のセリフの「・・・」には、あえて心で感じていることを言葉にしないという日本人らしさが現れているように思えます。
しかし、このままではすれ違いが深まり、夫婦の深刻な危機が訪れてしまいそうです。
(次回へ続く)
畠山正文
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