カウンセリングって意味あるの? <その1>

 「カウンセリングって意味あるの?」という疑問について、考えていきたいと思います。この疑問に応える作業は結果的に、「カウンセラーと話してるだけで本当に問題が解決するの?」「カウンセリングで悩みを取り除けるの?」というような疑問にもつながっていく作業になるだろうと思います。こうした疑問は、カウンセラーという職業の社会的な認知度が高まるにつれ、以前に比べれば減ってはきたものの、それでもいまだに根強く問われることが多くあります。これは、様々な事件や災害、事故などが大きく報道され、「心のケアが大切」というムードが高まっているので、まあ何となく大切なのかなと漠然と思ってはいるものの、いざ「どう大切なのか?」と聞かれてしまうと、あるいは当事者として関わる状況に立たされてしまうと、たちまちによくわからなくなってしまうということと関連しているように思います。

 さて、この疑問について考えていく前に、そもそも「悩む」とか「(解決すべき)問題」とかとはいったい何なのかを考えなくてはいけません。次のA君の場合を例にあげながら考えてみましょう。これは架空のケースです。

 中学1年生の男子A君は、GW明けから朝起きると頭痛がしてどうにもなりません。何度か学校を休んで病院にもいきました。しかし病院の検査では全くどこにも異常がないと言われます。そしてお医者さんから「ストレス性ですね」と言われ、「気持ちが楽になる薬」ということでお薬を飲むことになりました。この薬を1ヶ月くらい続けて飲んでみましたが、一向に頭痛はおさまりません。A君のお父さんもお母さんもとても真面目でしっかりした人なので、病院で異常がないという結果が出た以上、頭痛でA君が学校を休んだり、遅刻したりすることを決して許しません。「病は気から」「日常生活を規則正しくきちんと過ごしていれば、そのうち頭痛も治る」お父さんやお母さん、先生からそう諭されながら、時にものすごい痛みを我慢しながらA君は学校に通い続けました。夏休みに入るまでは何とかやり過ごしましたが、夏休み明けからぱったり学校に通うことができなくなってしまいました。頭の痛みだけでなく、身体が言うことをきかず、全く動けなくなってしまったのです。お母さんが叫ぼうが、お父さんが怒鳴ろうが、A君は家から全く出られなくなってしまいました。仕方なく、お母さんはカウンセラーに相談にやってきました。

 お母さんからじっくりと一通りの話を聴いたカウンセラーは、A君やA君の家族にとっての「悩み」はいったい何だろうか、と考えました。差し当たっての「悩み」は、「身体が言うことをきかず、全く動けなくなってしまったこと」であり、「学校に通えないこと」であります。しかし、そもそもは「頭が痛いこと」が「悩み」でした。病院から処方されたお薬も、「病は気から」という周囲の人たちからの声掛けも、そもそもはこの「頭が痛いこと」という「悩み」を解決してあげよう、取り除いてあげようという明確な意図をもって採用された方法です。実際問題として、こうした方法でうまく「悩み」が解決する場合もあります。しかし、A君の場合これではうまくいきませんでした。こういう時に、カウンセラーはこんなふうに考えます。この「頭が痛いこと」という「悩み」とは別の「悩み」がA君にはあるはずだ、と。もう少し正確に言うなら、「頭が痛いこと」という「悩み」とは別の「悩み」があると想定した方が、「頭が痛いこと」という「悩み」からA君は解放されやすくなるだろうと、そんなふうにカウンセラーは考えます。 しかし、ここまでの話であれば、別にカウンセラーに限らず、例えばA君が受診をしたお医者さんもA君の状態を見立てて「ストレス性ですね」と言ったわけですから、「頭が痛い」とA君が言っている背景には何らかのストレスが関係している、つまり何か別の「悩み」が関係していると言おうとしているわけで、多くの人が考えつくことです。カウンセラーが大切にすることは、ここから先の次のことです。つまり、「頭が痛い」という「悩み」が、別の「悩み」へと自ずから変化していくということ、このことこそカウンセラーが最も大切にすることです。A君の例でいえば、A君やA君の周囲の人たちの力によって、別の「悩み」があったのかもしれないということを自ら発見することになるということです。この「自ずから変化していく」とか、「自ら発見していく」ということを、ものすごく大切にするのがカウンセラーです。なぜこれらを大切にするのでしょうか。ここにこそカウンセラーの存在意義があるからです。次回詳しく見ていきたいと思います。

畠山正文

コメント

  1. 橋本順子 より:

    コメントは何について書いていいのですか?

    • 畠山 正文 より:

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